研究開発情報

正しいインクジェットヘッドの選び方

産業用インクジェットヘッドは、世界十数社のヘッドメーカーから提供されています。
各社、数種類~数十種類のヘッドを扱っており、非常に多くの産業用インクジェットヘッドが市場に提供されていますが、その違いをヘッド仕様から見分けるのは困難です。

ヘッドの詳細情報を知る難しさ

メーカーから提供されるヘッドの仕様を見ると、細かい違いはありますが、解像度や吐出量など、どのメーカーも似通った値を持っています。
一方で、どの液でどのような特性を発揮できるのか、着滴位置精度はどの程度なのかといった細かい情報の開示に関してはメーカーごとに異なっており、詳細な情報の取得は難しい状況です。
その中で、インクジェットヘッドを用いた塗布システムを構築する場合、初期段階でインクジェットヘッドを選択するプロセスが発生します。

例えば、皆さんがUV硬化インクを塗布するシステムを検討する場合、各ヘッドメーカーのWEBサイトを見て、UV硬化インクを使用できるヘッドを探すと思いますが、複数候補がある中で最終的にどのヘッドが良いか決めるとき、何を基準にすれば良いのでしょうか?
インクジェットヘッドを選定することがいかに重要か、これから説明していきます。

ヘッド選択の重要性

実は、同じヘッドメーカーのヘッドであっても種類ごとに特徴があり、それぞれ特性が大きく異なります。
そもそも、本来は画像印刷用に開発されている産業用インクジェットヘッドのため、画像印刷以外の工業応用用途で用いる場合は、ヘッドごとの特徴を正確に把握し、目的を実現しやすいヘッドを選定してから研究を始めることが重要です。
間違ったヘッドを選定したがゆえに、数年後にそのヘッドでは目的とする信頼性が得られないといった事実が判明した例も見受けられます。

工業応用インクジェットヘッドの選定ポイント

画像印刷用に開発された産業用インクジェットヘッドを工業用途に応用する場合、以下のような選定ポイントがあります。

選定ポイント

  • 吐出量
  • 使用可能インク
  • 粘度

これ以外にもノズル解像度などが選定基準としてありますが、以下のような項目もインクジェットヘッドを選定する上で重要なことをご存知でしょうか?

  • 液導入性
  • 耐液性

例えば、「液導入性」については、数値で表せる項目ではないため、仕様書には記載されず、見落としがちな選定ポイントとなります。
インクジェットヘッドに液を充填すると、すべてのノズルからきれいに液が吐出されることをイメージされる方が多いですが、液やヘッドにより導入性は大きく異なり、すべてのノズルから液を吐出するのが困難な場合もあります。
その導入性の違いについて、以下の動画をご覧ください。

  • 【 動画1 】 導入性が悪い例

  • 【 動画2 】 導入性が良い例

導入性が悪い例は、加圧による液排出とノズル面のワイピング操作を繰り返しても全ノズルから吐出されないのに対して、導入性が良い例は1度の液充填操作で全ノズルから吐出していることが確認できます。
これは一例ですが、このようにヘッド仕様書に記載されない特性まで含めて最適なヘッドを選定することが、研究開発の初期段階で非常に重要です。


当社では、お客様の目的や使用する液材料に応じて適切なヘッドを選定いただくために、ヘッド選定サービスを提供させていただいております。その際には、上記の選定ポイントの他に10項目以上の選定ポイントにてヘッドを選定しております。

技術サービスの詳しい説明はこちら

工業応用マルチノズルヘッド

インクジェットヘッドには、1ヘッドに複数のノズルを有するマルチノズルヘッドと1本のノズルを有するシングルノズルヘッドがあります。
生産能力が高い生産システムを構築する場合、マルチノズルインクジェットヘッドを搭載することが一般的です。
当社では、以下のヘッドメーカーのヘッドを搭載可能な研究開発装置を販売しております。


当社装置に搭載可能なヘッドメーカー

  • コニカミノルタ株式会社
  • 東芝テック株式会社
  • 富士フイルム株式会社
  • 株式会社リコー



各メーカーの主要ヘッド概仕様はこちら

マルチノズルヘッドとシングルノズルヘッド

ところで、世の中にはシングルノズルのインクジェットヘッドが存在します。
では、シングルノズルヘッドは一体どのような目的で使用されるのでしょうか?

次はシングルノズルヘッドのメリットと、そこから見えるインクジェットの研究開発の進め方について見ていきます。


シングルノズルヘッドを使用する選択肢

インクジェット技術を工業応用する中で高速生産を重要視し、開発当初からマルチノズルヘッドを選択される方が多くいらっしゃいますが、当社では、液材料開発を伴う開発の初期段階では、シングルノズルヘッドを提案させていただくことがあります。
その理由は、実はマルチノズルヘッドでの研究開発は非常に難しい開発となり、液をヘッドに導入しても全く吐出しないというケースが多いためです。
さらに、メーカーが推奨している物性値になるように液材料を調整しても、簡単には安定した吐出が得られないため、液材料の物性値がどのように吐出に影響しているかがわからないままノウハウがたまらず、時間と費用をかけても開発が思ったように進まない結果となり、多くの方が挫折してしまいます。
一方、シングルノズルヘッドを使用した場合には、液の制約が少ないこともあり、マルチノズルヘッドよりも比較的簡単に吐出が得やすい!すなわち調整や評価を繰り返すごとにノウハウがたまり、確実な進展が見込めるのです。
シングルノズルヘッドで安定吐出ができるレベルまで液材料の作り込みができたら、それは、ある程度のインクジェット適性が確保できた液になっています。それを工業用途で使用するマルチノズルヘッドでより詳細に評価し、液材の作り込みを進めることで開発を確実に進展させることができます。

マイクロジェット社製 シングルノズルヘッド

 シングルノズルへッド概仕様はこちら

  
    吐出可能な液物性

  • 高粘度液 (0.5~40 mPa・s、 液非加熱)     
  • 高表面張力液 (純水:72mN/mの吐出) 
  • 粒子含有液 (粒子サイズ:~φ20μm程度) 
  • 高耐液性 (接着剤未使用、適応pH:1~13) 

ヘッドの詳細情報を知る

繰り返しになりますが、研究開発を確実に進めるために、ヘッドの選定は非常に重要となります。
当社では、インクジェット技術を工業応用する際に必要となるインクジェット基礎力を確実に習得していただくためにオンラインでのインクジェットセミナー「InkJet Academy® WEBセミナー」を開催しています。
【 入門編Aコース インクジェット吐出原理と各社インクジェットヘッド 】 を受講いただき、自社の目的や液に適合するヘッドを選定できる知識を身に付けてはいかがでしょうか?

インクジェットセミナーの詳しい説明はこちら

現在、期間限定で特別価格での受講が可能です。この機会に在宅勤務での時間を活かしてインクジェット技術のノウハウを習得してはいかがでしょうか。



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