研究開発情報

微小領域の濡れ性(接触角)評価

従来不可能だった極微小領域の接触角測定を実現

マイクロ流路、高感度センサー、診断チップなどの微細デバイスにおいて、その表面状態の制御や均一化はデバイス性能や品質を確保する上で非常に重要になっています。

表面状態を評価する指標の1つに接触角がありますが、デバイスの微細化に伴い、材料に対する単純な接触角評価では不十分であり、素子や構造体の表面状態(濡れ性)をピンポイントで把握することが必要になっています。

なぜ微小領域での濡れ性評価が必要なのか

一般の接触角測定装置は、金属やガラスの細いキャピラリーから、測定部位に液を垂らしてその時の画像を真横から撮影し、画像より接触角を求めます。

具体的には、キャピラリーに微小な圧力をかけ、先端のノズルから微量の液を押し出すことにより、ノズル先端に液滴を形成し、それを測定部に近づけていき、液滴をノズルから測定部位側に付着させます。そして、この移動した液滴を横から撮影して測定します。

しかし、キャピラリーによって生成される液滴は直径1mm以上になることが多く、従来技術では数百µmの領域での濡れ性を正確に評価することができません

その対策として、「インクジェット技術」を使った液滴形成が活用されています。

インクジェット技術は、ピコリットルオーダーで高精度かつ再現性の高い液滴形成が特徴であり、直径20~50µm程度の液滴を形成し、狙った位置に非接触で着滴させることができるため、インクジェット法を用いれば、微細構造内の特定部位における濡れ性や接触角の評価が可能になります。

接触角測定における従来法とインクジェット法の違い

⟺ スクロールできます
     従来の接触角測定 インクジェット式接触角測定
測定方法 Φ1mm以上の液滴を間接接触により着滴 Φ20~50μm程のインクジェット液滴を
非接触により着滴
簡易図
液滴径 Φ1mm以上 Φ20~50μm
液滴体積のばらつき

濡れ性評価におけるインクジェット法のメリット

インクジェットによる非接触での液滴制御は、従来の接触式での評価に対し、他にも優位性があります。

例えば、測定対象物の撥液性が高い場合、従来の接触式では測定箇所に液滴がなかなか付着せず、安定した測定ができない課題があります。しかし、非接触式は対象物の影響を受けないためこのような問題は発生しません。

また、微量の液体を扱うプロセスにおいては、乾燥挙動を評価する上で実際の液滴量で評価することが必須となります。
キャピラリーを使用する方法で形成される液滴はマイクロリットルオーダーですが、インクジェットはピコリットルオーダーであり、複数滴を狙った部位に連続塗布することで、ピコ~ナノリットルオーダーでの乾燥挙動の評価が可能です。

以下のグラフは、撥水性ガラス上における接触角の経時変化を、液滴量ごとに示したグラフです。これを見ると、液滴量に応じて乾燥時の接触角変化が大きく異なることが分かります。

撥水性ガラス上における接触角の経時変化

デバイス評価事例

高感度センサーなどの微細デバイスにおいて、実際のデバイスや評価系に応じて表面状態を測定することが必須です。
しかし、まだ多くの分野で表面材料そのものに対する接触角などでの代替評価に留まっているケースが見受けられます。

デバイス用途がより高精度になるほど、ほんの少しのばらつきが性能に大きく影響することもあり、インクジェット技術を使った濡れ性評価は、プリンターなどの印刷分野に限らず、モノづくり分野での活用が進んでいます。

一例として、マトリックス構造内への注入プロセスをご紹介します。

マトリックス構造内に材料を注入するプロセスにおいて、最終的に形成される薄膜の均一性に加え、隙間なく、確実に材料を枠内に満たす必要があります。
通常は注入後に顕微鏡で観察するなどの手法で評価が行われますが、これでは正確な評価ができません。
特に、注入する材料の研究開発においては、注入時の挙動を把握しながら材料を作り込む必要があり、この1次情報が把握できない場合、注入後の観察結果から推測しながらトライアンドエラーを繰り返す形になります。
その結果、作り込んだ材料やプロセスの課題に気づかないまま、モノづくりを進めることになり、最終的な生産においてトラブルになるケースもあります。

インクジェット技術を活用した濡れ性評価であれば、注入直後からその挙動解析が可能です。


マトリックス構造内への着滴挙動
左:真上方向から観察映像   右:真横方向からの観察映像

これは弊社のインクジェット式着滴解析&局所接触角計「DropMeasure」で撮影した動画です。高速度カメラで撮影を行っており、液滴が着滴した瞬間から、濡れ広がり、乾燥するまでの挙動を把握することが可能です。DropMeasureは世界で初めてインクジェット技術による真上・真横方向からの同時撮影を可能にした装置であり、接触角の経時変化に加え、浸透や乾燥挙動をより詳細に解析できるため、さまざまな分野で活用されています。

DropMeasureでの解析事例は専用WEBサイトにまとめていますので、ぜひ一度ご覧ください。
また、弊社ではDropMeasureによる受託測定サービスも行っておりますので、ご質問やご依頼は下記のお問合せ先までご連絡ください。

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