研究開発情報

筑波大学/山岸助教による研究成果がLaser & Photonics Reviews誌に掲載されました

筑波大学の山本・山岸研究室が、九州大学の吉岡研究室と共同で、
インクジェット法を活用した「液体でできた微小なレーザー光源の開発」に成功しました

 電気や光を研究する分野では、曲げたり折ったりできる柔らかいデバイスが注目を集めています。従来、こういった柔らかいデバイスの素材には主にプラスチックが利用されてきましたが、その柔らかさには限界があります。本研究では究極の柔らかさを持つ素材として液体に着目し、100%液体でできたレーザー光源の開発に成功しました。
 レーザーを構成する要素の⼀部に液体を利用したデバイスはすでに存在しています。しかしながら、レーザーを生み出す容器が硬い固体でできているため、柔らかさを備えることはできません。レーザーを生み出す容器も液体で作ろうとする試みはありましたが、大気中で安定に利用できる真球形状の微小な液滴の作製が難しく、実現には至っていませんでした。
 本研究では、室温イオン液体を用い、超撥水性表面を持つ基板上で、液滴を形成する条件を最適化することで、これらの問題を解決しました。作製した微小な液滴は、基板上でほぼ真球の形状を維持できる上に、大気中でも蒸発が検知できないほど安定です。さらに、最も優れた有機マイクロ球体レーザーと同等の性能を示しました。液滴は極めて弱い力、例えば微風によって変形し、それに伴いレーザーの性能を調整できることも明らかにしました。インクジェットプリンターを利用すれば、多数の液滴からなるアレイの作製も可能です。本研究は安定な液体レーザーデバイスを構築するための基本的な材料戦略を提供するものであり、新たな柔らかい光デバイスの実現につながると期待できます。

筑波大学・九州大学プレスリリースより引用

掲載論文のご案内

この研究成果は、Laser & Photonics Reviews誌に掲載されています。

筑波大学プレスリリースページ

Laser & Photonics Reviews誌HP内該当論文ページ

論文情報

タイトル Pneumatically tunable droplet microlaser(気流で制御可能な液滴レーザー)
掲載誌 Laser & Photonics Reviews
著者 Hiroshi Yamagishi 1), Keitaro Fujita 1), Junnosuke Miyagawa 1), Yuya Mikami 2), Hiroaki Yoshioka 2). Yuji Oki 2), Naoki Takada 3), Soumei Baba 3), Shimpei Saito 3), Satoshi Someya 3), Zhan-Hong Lin 4), Jer-Shing Huang 4), Yohei Yamamoto 5)

1) Department of Materials Science, Institute of Pure and Applied Sciences, and Tsukuba Research Center for Energy Materials Science (TREMS), University of Tsukuba
2) Faculty of Information Science and Electrical Engineering, Kyushu University
3) Research Institute for Energy Conservation, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
4) Research Department of Nanooptics, Leibniz Institute of Photonic Technology
5) Department of Materials Science, Institute of Pure and Applied Sciences, and Tsukuba Research Center for Energy Materials Science (TREMS), University of Tsukuba
掲載⽇ 2023年2⽉7⽇
DOI 10.1002/lpor.202200874
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