研究開発情報

ペロブスカイト太陽電池

ペロブスカイト太陽電池とは?

現在主流の「結晶シリコン型太陽電池」

太陽電池は構造や構成素材により複数種類あります。現在主流となっている太陽電池は結晶シリコン型と呼ばれており、1950年代から使用されています。その歴史的な背景もあり、結晶シリコン型太陽電池は信頼性が高く、現在では多く普及している方式になっています。

結晶シリコン型太陽電池は、発電効率が高く、かつ結晶構造であるため劣化もしにくいなど多くのメリットがあります。一方で、シリコンは光吸収特性が弱いというデメリットを抱えています。十分な光吸収を行うためには、一定の厚さを持つ構造が必要です。その関係で、薄くすることが難しく、太陽電池ユニット自体の重量が重いという課題があります。また、発電コストが火力発電などと比較してまだ高いという課題もあります。

研究開発が盛んな「ペロブスカイト太陽電池」

結晶シリコン型太陽電池における課題を解決する方式として注目を集めている太陽電池がペロブスカイト太陽電池です。ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を持つ化合物を使用しており、作製コストが低く、薄膜化が容易な点が特徴です。これまで発電効率が課題でしたが、従来の結晶シリコン型と同程度の発電性能を出した研究報告例も増えており、今注目の太陽電池です。そのような背景から、ペロブスカイト太陽電池の研究開発は各国で盛んに行われています。

ペロブスカイト太陽電池の代表的な構造

ペロブスカイト太陽電池(Perovskite Solar Cell、PSC)とは
ペロブスカイト構造の結晶材料を用いる太陽電池。既存の太陽電池に積層することでエネルギー変換効率を向上させるほか、溶液塗布による作成や折り曲げ加工が可能。安価で高効率な太陽電池材料として注目されている。
(デジタル大辞泉より引用)


ペロブスカイト太陽電池の特徴

  • 薄膜構造が可能
    構造的にシリコン結晶型のような厚みが不要となるため、軽くて薄い構造にすることができ、フィルムのような柔軟性がある状態にすることもできます。
  • 材料の少量化
    薄膜形成となるため、材料量を抑えることが可能です。
  • 様々な塗布方法が可能
    各層が薄膜で形成されているため、インクジェットなどの様々な塗布方法を使用することができます。
  • 低コスト化
    使用可能な塗布方法は低コスト化しやすい手法が多いため、コスト削減が可能です。

このような特徴があり、ペロブスカイト太陽電池は従来の太陽電池とは大きく特徴が異なります。当初はシリコン結晶型に対して発電性能が低いことが課題とされていましたが、現在では発電効率が25%を超えるという論文も発表され、またシリコン結晶型の課題とされていた低照度での発電効率でもメリットがあるなど、近年性能が大幅に向上してきています。
このような背景もあり、ペロブスカイト太陽電池の研究開発は急速に進んでいますが、その一方で既存の太陽電池などと比較して実用化にはいくつか課題も残されています。

ペロブスカイト太陽電池の課題

実用化の課題

  • 耐久性   ・・・ 特に日光が当たったときの温度上昇による劣化
  • 重金属使用 ・・・ 鉛を使用しているため、将来的に使用を継続できるか不明
  • 大面積化  ・・・ 現在は□10mm程度の素子で研究が進んでいる

このような課題があるなかで、大面積化に対する課題解決としてインクジェット技術が注目されています。

インクジェット技術による課題解決

大面積化に対する課題解決「インクジェット技術」

インクジェット技術は大面積化が容易であり、また均一な薄膜形成に向いている点も踏まえて、将来的な量産化を踏まえた上での製造手法の1つとして検討されています。

これまでペロブスカイト太陽電池の研究開発はラボスケールで進められており、特にスピンコートされたペロブスカイト薄膜における機能評価が重点的でした。
しかし、将来の商用化を考えると、ペロブスカイト太陽電池のスケーラブルな製造は重要な課題となっています。この課題を解決する有望な技術の1つとして注目を集めているのがインクジェット技術です。
インクジェット技術は薄膜塗布に適した技術であり、複数の液体を制御することで、複数の薄膜形成を実現できる技術です。

インクジェット技術による複数の薄膜形成プロセス 2層塗り_ヘッドが再度出現アニメーション

ペロブスカイト太陽電池をインクジェット技術によって印刷する試みは既に多くの研究例が報告されています。
ペロブスカイト太陽電池の製造のためのインクジェット技術の開発は、光起電力デバイスの製造に革命をもたらす可能性を秘めた魅力的な研究分野のひとつといえます。

インクジェット技術を用いる上での最適化の重要性

インクジェット技術を用いて印刷されたペロブスカイト太陽電池の特性は、スピンコートによって作製された太陽電池の特性に比べて劣っていることが多く、その点が課題として知られています。
スピンコート用に作製した塗布液をそのままインクジェット技術に適用しても安定塗布ができません。
インクジェット技術によるペロブスカイト太陽電池の印刷を実現するためには、必要な特性を発揮できる塗布液の開発、塗布プロセス、前工程、後工程の最適化が必要となります。

このような背景から、高品質・高性能なペロブスカイト薄膜を実現するために、インクジェット技術に適しており、かつ機能を発現できる塗布液の組成や印刷パラメーターを最適化するための研究開発が各所で行われています。

研究開発用インクジェット装置の必要性

一般的なインクジェットプリンターは、画像印刷に特化しており、耐薬品性や塗布プロセスの変更自由度の点で研究開発に適していません。また、産業用マルチノズルインクジェットヘッドを搭載した研究開発装置は、高速な薄膜形成に適していますが、耐薬品性に制限があります。また、液量も100cc以上必要となることが多く、複数の液評価を高サイクルで回すためには、大量の液を準備する必要があります。

塗布液の開発や塗布プロセスの評価を高速に進めるためには、少量の塗布液で実験できる装置、耐薬品性の制約が少ない装置、様々な塗布プロセスを検証可能な装置が有効です

ペロブスカイト太陽電池の薄膜塗布形成・検証可能な装置

少量の液で、耐薬品性の制約なく、ペロブスカイト太陽電池の薄膜のインクジェット塗布による検証を小さいエリアでも良いからしたい、そんな要望を満たせる装置が、マイクロジェット社製基礎研究用1ノズルパターニング装置LaboJetです。
この装置は、ガラス製の1ノズルのインクジェットヘッドを搭載できる評価装置です。
微量な液に対応しており、1ccの液があれば、塗膜評価が可能です。また、印刷条件の変更や液の交換による複数種類の液体の塗布評価が可能な実験装置になります。
シンプルな構造であり、接液部材はガラスとテフロンのみです。ガラスとテフロンの耐性がある液であれば、様々な液が使用可能です。

「基礎研究用1ノズルパターニング装置 LaboJet」詳細はこちら

ご相談、カタログ請求、デモ・見積依頼はこちらから

お問い合わせ・カタログ請求

※ 機密保持契約の有無にかかわらず、 ご相談内容は機密情報として取扱い、第三者には一切開示いたしません。
※ お問い合わせの際には、「よくあるご質問」もご一読ください。

研究開発情報