海洋研究開発機構/生命理工学センターの研究成果がiScience、STAR Protocolsに掲載されました
1ナノグラム以下のセルロースの分解を定量可能なナノテク計測技術を開発
− 先端計測とインフォマティクスにより深海微生物の新たな有用性を明らかに −
概要 地球上で最も豊富なバイオマスであるセルロースの酵素分解プロセスの利活用は、バイオマス原料からのファインケミカル生産など、カーボンニュートラルやSDGsの達成に必要不可欠です。しかしながら水に溶けないセルロースの分解速度は非常に遅く、反応の計測・解析が研究開発を進める上での大きなボトルネックになっていました。
国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 大和 裕幸、以下「JAMSTEC」という。)海洋機能利用部門 生命理工学センターの出口 茂センター長らは、セルロースの酵素分解を超高感度に可視化・定量できる先端ナノ計測技術「SPOT」(Surface Pitting Observation Technology)を開発しました。SPOTとバイオインフォマティクスを組み合わせた研究によって、深海に生息する微生物が新規なセルロース分解酵素の探索に向けた有望なバイオリソースであることを明らかにしました。
本成果は、Cell Pressが発行する学術誌「iScience」に2022年7月30日付(日本時間)でオンライン掲載されました。
これまでセルロースのような水不溶性基質の酵素分解プロセスを測定することは、基質表面にしか酵素がアクセスできないため反応速度が低く困難とされていました。
本論文ではSPOT技術を応用したセルロース酵素加水分解の分析プロトコルについて記載されています。また加水分解に伴う体積減少を分析するため、インクジェットパターニングと光学的プロフィロメトリーを組み合わせた手法についても紹介されています。
セルロース酵素加水分解の分析プロトコール概要(STAR Protocolsより)
掲載論文のご案内
この研究成果は、iScience誌およびSTAR Protocols誌に掲載されています。
iScience誌 掲載論文
論文情報
タイトル | An Ultrasensitive Nanofiber-Based Assay for the Enzymatic Hydrolysis and Deep-Sea Microbial Degradation of Cellulose |
---|---|
掲載誌 | iScience |
著者 | 津留美紀子1、立岡美夏子1、宮崎征行2、内村康介1、津田美和子2、高木善弘2、出口茂1
|
掲載⽇ | 2022年7月30日 |
DOI | 10.1016/j.isci.2022.104732 |
STAR Protocols誌 掲載論文
論文情報
タイトル | Protocol for analyzing enzymatic hydrolysis of cellulose using surface pitting observation technology |
---|---|
掲載誌 | STAR Protocols |
著者 | Mikako Tachioka,1,2,* Mikiko Tsudome,1 and Shigeru Deguchi1,3,*
*Correspondence: tachiokam@jamstec.go.jp (M.T.), shigeru.deguchi@jamstec.go.jp (S.D.) |
掲載⽇ | 2023年1⽉24⽇ |
DOI | 10.1016/j.xpro.2023.102066 |