研究開発情報

産総研/山添主任研究員らの研究成果がBiomaterialsに掲載されました

体に有害な活性酸素を除去できる「タンパク質マイクロマシン」を開発
− インクジェット法によるタンパク質の超微量分注 −

ポイント
・活性酸素除去機能を備えたマイクロマシンを、タンパク質だけで作製
・活性酸素を分泌する細胞を捕捉し炎症性疾患悪化の原因となる活性酸素を除去
・天然素材でできた医療用デバイスを用いる、体にやさしい治療の実現へ期待


「研究者が語る! 1分解説」動画(1分59秒)

概要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)バイオメディカル研究部門【研究部門長 近江谷 克裕】次世代メディカルデバイス研究グループ 山添 泰宗 主任研究員は、3種類のタンパク質だけからなり、活性酸素を除去できる高機能なマイクロメートルスケールの構造体(タンパク質マイクロマシン)を開発した。

体内で過剰に発生した活性酸素は炎症を引き起こし、さまざまな病気に結びつく。今回開発したタンパク質マイクロマシンの本体部分は、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)(活性酸素を除去するタンパク質)と血清アルブミン(さまざまな薬剤と結合するタンパク質)で構成され、表面には抗体(標的となる細胞を捕捉するタンパク質)が組み込まれている。抗体が活性酸素を分泌する細胞を捕捉し、本体内部のSODが過剰な活性酸素を除去する。また、本体に結合した抗炎症薬の放出により細胞の活性酸素生成を抑制できる。炎症性疾患などの新たな治療法の開発に貢献することが期待される。

なお、この成果の詳細は、2017年 11 月16日(現地時間)に学術誌 Biomaterialsにオンライン掲載される。


タンパク質マイクロマシンによる活性酸素の除去

国立研究開発法人 産業技術総合研究所  研究成果記事一覧より引用


多くのタンパク質は、少しの刺激によって容易にその立体構造が壊れて、機能も失われるため、取り扱いが困難であり、そのため、複数のタンパク質を“部品”として、乾燥状態にも耐えられる強さと高度な機能を備えたナノ・マイクロマシンを組み立てることは困難とされていました。

本論文では、多彩な機能を備え、体に害を及ぼさず、役割を終えた後には自然に分解可能な「タンパク質マイクロマシン」について記載しています。

また、本研究成果をもとに、治療用細胞を目的地に輸送できるタンパク質マイクロマシンや(関連論文1、3)、 腸の病変部に付着し高度な治療を行うタンパク質マイクロマシンの開発にも成功しています(関連論文2)。

掲載論文のご案内

この研究成果は、Biomaterials誌に掲載されています。

Biomaterials誌 掲載論文


ニュースリリース

Biomaterials誌 ニュースページ

Biomaterials誌 論文ページ

論文情報

タイトル Multifunctional protein microparticles for medical applications
掲載誌 Biomaterials
著者 Hironori Yamazoe

National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST), 1-8-31 Midorigaoka, Ikeda, Osaka, 563-8577, Japan
掲載⽇ 2017年11月16日
DOI 10.1016/j.biomaterials.2017.10.045

関連論文のご案内

この研究成果は、以下論文に関連しています。

関連論文1 ACS Applied Materials & Interfaces誌 掲載論文


ACS Applied Materials & Interfaces誌 論文ページ

論文情報

タイトル Potential of the coordinated actions of multiple protein-based micromachines for medical applications
掲載誌 ACS Applied Materials & Interfaces
著者 Hironori Yamazoe*, Takaaki Kurinomaru, Akiko Inagaki
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
掲載⽇ 2022年7⽉12⽇
DOI 10.1021/acsami.2c08223


関連論文2 Small Methods誌 掲載論文


Small Methods誌 掲載論文

論文情報

タイトル Superior adhesion of a multifunctional protein-based micropatch to intestinal tissue by harnessing the hydrophobic effect
掲載誌 Small Methods
著者 Hironori Yamazoe 1), Chizuko Kominami 1), Hiroko Abe 2)

1 ) Advanced Medical Devices Research Group, Biomedical Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
2 ) Cellular Function Analysis Research Group, Health and Medical Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
掲載⽇ 2022年4⽉23⽇
DOI 10.1002/smtd.202200153


関連論文3 Materials Horizons誌 掲載論文


Materials Horizons誌 掲載論文

論文情報

タイトル Protein microswimmers capable of delivering cells for tissue engineering applications
掲載誌 Materials Horizons
著者 Takaaki Kurinomaru 1), Akiko Inagaki 1), Masamichi Hoshi 2) 3), Chikashi Nakamura2) 3), Hironori Yamazoe 1)*

1 ) Advanced Medical Devices Research Group, Biomedical Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
2 ) Department of Biotechnology and Life Science, Tokyo University of Agriculture and Technology
3 ) Cell Mechanics Research Group, Biomedical Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
掲載⽇ 2020年7⽉
DOI 10.1039/C9MH01799B
研究開発情報