3Dプリンターはインクジェット技術の特徴である微小液滴、高い着滴精度、非接触方式、オンデマンド制御を応用した例になります。7つある3Dプリンター造形方式の中で、インクジェット技術は5つの方法に応用されています。
インクジェット技術を用いた主な造形方法は、主にマテリアルジェッティングと呼ばれる造形材料を直接噴射して造形する手法と、バインダージェッティングと呼ばれる積層した紛体にバインダー液を噴射し固化させて造形を行う手法です。
研究開発の分野ではこれらの造形手法を用いて、金属材料やセラミック、生体材料を含む機能性材料での造形例が数多く報告されています。
中でも代表的な造形方式はBinder Jetting(結合剤噴射法)とMaterial Jetting (材料噴射法)です。市販のこの2方式の3Dプリンターにおいては研究目的で造形パラメーターを振ったり、純正以外の造形材料を用いて造形はできません。
そのため、市販の3Dプリンターを使って、造形材料の開発や造形プロセスの研究は行えません。そこで当社は業界初となる、研究開発用3DプリンターMateriARTを開発しました。現在はこの装置を使った造形試作サービスを提供しています。
インクジェットを用いた3Dプリンティングの研究を行う場合、市販の3Dプリンターの紛体を研究目的の紛体に入れ替えたり、3Dプリンターに搭載されているバインダー液やUV硬化液を目的の液に入れ替えて実験を行うといった進め方をしてしまっているケースが見受けられます。
しかし、このような進め方ではうまく行きません。これには多くの理由がありますが、主な理由は2つです。
1つ目は液や紛体、目的の形状・機能に応じて造形条件が異なるためです。
通常の3Dプリンターの造形条件は、長年の研究の末、目的の造形が出来るように特定の材料に対して最適化されています。
そのため、市販されている装置に液や紛体を入れ替えて使用するだけでは、造形条件が不適切なため造形が困難です。バインダージェッティングであれば、紛体の粒子サイズ、紛体間摩擦力、形状等に応じた積層条件を選定する必要があります。
またどのような塗布密度や速度、手法でバインダー成分を注入するかが重要な条件です。マテリアルジェッティングの場合は、材料に応じた塗布条件、平滑化条件を選定することが重要です。
また、どのパラメータがキーになるかは、使用する材料や目的の機能によって変わってくるため、そのパラメータの特定からが重要な研究となります。上記に対応するため、まずは造形条件をさまざまに変更できる装置を用意し、目的とする造形物機能と造形に使用する材料に適した造形条件を設定するプロセス評価が重要になってきます。
2つ目は、インクジェットヘッドに対する液の合わせ込みです。
インクジェットでは使用する液に適したヘッド選択が重要になります。
また、ヘッドの駆動条件次第で吐出の安定性が異なり、3Dプリンターは吐出の安定性が造形精度に大きな影響を与えます。そのため、長時間の吐出安定性を確保するための吐出評価および評価による安定条件の選定が必須のアクションになります。このような評価を行うためには、安定吐出条件を設定するためのインクジェット技術に対する理解と、評価するためのシステムが求められます。
上記のように、3D造形を行う場合、造形を成り立たせるためのプロセス評価が重要になります。
研究開発者はインクジェット技術を理解した上で造形を実現するプロセス開発を行う事が求められます。
尚、弊社では、さまざまな造形条件を変更可能な研究開発用インクジェット式3Dプリンター MateriARTを使った造形試作サービスを提供しております。